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理事長所信

公益社団法人前橋青年会議所 第75代 理事長 西川裕志

はじめに〜

「新日本の再建は我々青年の仕事である」という一文から始まる設立趣意書のもと、昭和25 年 4 月、全国で 3 番目に設立された前橋青年会議所は、74 年に渡り、「明るい豊かな社会」の実現という普遍的な共通理念のもと、時代の変化に先駆けて躍動感溢れる革新的な運動を展開してきました。74 年という長い歴史の中で紡がれてきたその伝統は、今でも私たちの誇りであり、原動力となっています。
 近年、私たちの取り巻く環境は複雑さを増しています。日々変化する経済状況、世界情勢、自然災害やパンデミックに於ける様々な想定外の出来事に対し、有無を言わさず対応と適応が求められています。さらに、急速に発展するインフラストラクチャ―や革新的な技術開発は、人々のコミュニティを含む様々な分野で効率化がなされ、これまでの常識的な価値観や存在意義をも変えるほど、社会へ大きな影響を及ぼしています。一方で、これらの進歩とともに人と人とのつながりが希薄化していることも社会課題の一つです。急激に変化する現代に於いて、青年会議所として「持続可能な地域の創造」と「明るい豊かな社会の実現」を目指し、「何ができるか」「何をすべきなのか」を見つめ直し、柔軟な組織改革と私たちの存在意義を地域に示す行動が求められています。

個の自律性を育み組織力の向上。そして選ばれる組織への挑戦。

 未来を語り合う仲間の存在は、前橋青年会議所の運動の可能性を広げている私たちにとってなくてはならないかけがえのないものです。人数の減少補填のために会員拡大が必要なのではありません。勿論一つの要素としては必要ですが、それ以上に多様な人財が集う前橋青年会議所に新しい発想や地域のためを想う人財が集うことで、多くの可能性が広がり発展へと導くことができます。
 共に成長し合える仲間を1人でも多く集い、拡大活動において強く意識し、紡がれてきた「全員拡大」を更に昇華し展開していきます。それには前橋青年会議所の現状を一人ひとりが把握し、当事者意識をもって前橋青年会議所の魅力を発信し、仲間を増やす必要があります。
 また、コロナ禍において例会や事業がオンラインで行われることも多くなりました。それに伴い会員間においても直接触れ合う機会が以前に比べ減少したことにより、今まで以上に仲間を増やすだけではなく、互いを気にかけフォローし合う関係性の構築が必要です。
 そして前橋青年会議所の魅力や運動を地域市民に発信し、私たちの魅力を知ってもらうことが会員拡大において重要となります。情報発信手段の普及により選択肢が増えた今、それぞれの特性を活かし、時代のニーズに合わせた戦略的な広報活動をする必要があります。それにより、運動に賛同する市民やパートナーが増え、「共に活動したい」と思われる情報発信を取り組んでいきます。

個の自律性を育み組織力の向上。そして選ばれる組織への挑戦。

 青年会議所運動を続けるうえで、最大の課題である会員拡大は、前橋青年会議所としても、過去に「メンバーの拡大意識の醸成」「広報活動の変革」「全員拡大の仕組みづくり」など、毎年様々な挑戦を行い、会員拡大を行ってきました。近年の前橋青年会議所は、卒業生の人数も多く、毎年会員数が純増しているわけではありませんが、過去に行ってきた会員拡大の様々な挑戦や仕組みづくりが実を結び、多くの成果につながってきていることも事実です。今後の会員拡大に必要なことは、全メンバーが主体的に関わることができる会員拡大の「仕組みの確立」であると考えます。確かに、毎年新たな仕組みづくりで挑戦することは、単年度制の観点からみても重要な要素の一つではあります。しかし、仕組みはあくまで手法であ
り目的ではありません。2024 年は、会員拡大の目的達成のために過去の成功事例を引継ぎ、仕組みを確立させる礎を築くことで、会員拡大に集中できる環境を整えます。
 次に、前橋青年会議所が魅力的な組織として、「選ばれる組織」でなくてはなりません。そのためには、「本音で話し合える組織の環境」と「個の自律」が不可欠です。本音で話し合える組織の環境は、多様な個性とオリジナリティ溢れる創造性を育みます。対話と交流を重んじ、組織全体の心理的安全性を高めることで、個が輝き、誰もが活躍できる組織へと導けるよう改革に努めます。そして、前橋青年会議所の主役である私たちが、自分を律し、目的に向かって主体的に行動できる人材でなくてはなりません。そのためには、目的達成のための価値観や信念が必要であり、さらに次のアクションを起こす判断力や決断力を個々に養うことが重要です。多様なプロフェッショナルが在籍する青年会議所であるからこそ、一人ひとりが更なる成長を遂げることで、他に類を見ない個性豊かな魅力溢れる組織形成につながると信じています。

明るい未来を見据えた社会の創造

 持続可能な地域を創るためには、未来ある青少年の健全育成を地域社会一体となって取り組まなければなりません。そのためにも、日本の将来を担う青少年の意識改革と個人の個性を排除することなく、受け入れる社会でなくてはなりません。情報交換の手段が発達したことにより、地域や文化、言語や年齢の壁を越えて、情報や知識を得ることが容易となりました。しかし、多様なデバイスを通じて得る膨大な情報に対して、人々は気づくことなく受け身となってしまっています。世間の確証バイアスの横行や、同調圧力による社会に対する不平不満を身近に感じてしまうことで、個性が失われると同時に社会に対する興味関心が薄れているように感じます。
 近年、日本財団がアジアや欧米の世界 9 か国の 17 歳~19 歳を対象とした「国や社会に対する意識」を調査した結果、「自分は大人だと思う」や「自分は責任ある社会の一員だと思う」などの設問に対し、日本の若者たちの回答だけが突出して低い数字となっています。他国と比較しても社会に対する当事者意識や主体性の欠如が露呈されているのが現実です。そこに付随している社会課題が、「若者の政治離れ」です。内閣府が調査した、「自国の政治に関する関心度」の意識調査に於かれましても、諸外国の若者と比べ、日本の若者は「自国の政治に関する関心度」は最も低いデータが出ています。「政治がわからない」「自分一人が投票しても変わらない」などが主な理由です。地域社会の未来を見据え、若者の意識改革のためにも、政治や地域社会と密接に関わることができる実体験が必要です。
 現代社会で求められる人材としても、主体的に行動できる人材の発掘に重点を置くことが当たり前になってきています。青少年の地域社会に対する当事者意識を醸成し、主体性を育む環境の形成を地域の課題と位置付ける必要があるのではないでしょうか。その課題解決のためにも、青少年が自ら考え行動を起こす実体験の機会を提供していきます。

交流から生まれる成長

 前述したように、将来の予測が困難な時代になっている今、新たな交流から生まれる人と人とのつながりの重要度が増してきています。これは、交流が新たな刺激や気づきを与え、成長の機会へとつながるからです。
 一方、持続可能な地域を目指すうえで、地域経済を充実させることも私たちに課せられた重要な要素の一つです。現在地方の中小企業が抱える経営課題は「労働人口の減少」「消費者ニーズの変化」「あらゆるコストの上昇」など多岐にわたります。こうした地域経済の課題に向き合い、その解決に向かうためにも、地域の企業や経済人との交流の積み重ねは、多くの気づきと学びを得る絶好の機会となるでしょう。さらに、前橋市の強みである中小企業の変革や健全な発展を図ることで、雇用の創出や地域経済の充実から、持続可能な地域の創造につながるのではないでしょうか。
 今後未来へ向けて変革を繰り返し、常に成長し続ける持続可能な地域を創造するためにも、積極的な交流に取り組み、ビジネスの機会を掴んで新しい価値を生み出す礎を築いていきます。

前橋花火大会を通じて、前橋青年会議所の存在感を地域に示すために

 前橋花火大会と前橋青年会議所は、新型コロナウイルスの影響により、中止された年や開催規模の縮小の時期も含め、これまで様々なかたちで携わってきました。そして、2023 年は新型コロナウイルスが 5 類へと移行されたことで、入場規制などの制限なく開催することができました。そこで私が改めて感じたことは、前橋花火大会を求めている市民が大勢いるということです。前橋花火大会の企画協力団体として、関係諸団体との関係をより強固なものとし、前橋花火大会のさらなる発展に寄与します。
 そして、前橋花火大会は現在の前橋青年会議所としても運動の最大の発信の場です。このスケールメリットを生かすためにも、前橋花火大会との相乗効果を得られるよう、地域を巻き込み、地域から愛される魅力的な運動を展開していきます。

明るい未来を見据えたビジョンを描こう

 2025 年、前橋青年会議所は創立 75 周年という節目の年を迎えます。これまでの歴史を紡いでくださった先輩諸兄に感謝と敬意を表するとともに、70 周年で策定した 5 か年の運動方針である「市民意識の改革」と「改革者の育成」の振り返りと検証を行います。新型コロナウイルスの影響による自粛期間。気候変動による自然災害。ロシアによるウクライナ侵攻。物資やエネルギー価格の高騰など、過去に類を見ない様々な現象に見舞われた 5 年間であったからこそ、多角的な視点をもって検証しなければなりません。先行き不透明で将来の予測が困難な時代だからこそ、メンバーが迷わないように 80 周年へ向けた明確なビジョンや戦略を定め、組織の方向性を示していきます。

おわりに

「JC は全てが修練の場であり、出席が全てである」
 これは、私が 2017 年に入会し最初に教えられた言葉です。当時、前橋青年会議所に知人が一人もいない状況で、漠然とした想いで仮入会をした私にとって、もっともシンプルで目標としやすいこの言葉が、これまで計り知れない貴重な経験と大切な出会いを与えてくれました。
 青年会議所は成長の機会を与え続けてくれる組織です。如何にして失敗やリスクを恐れず、挑戦することができるかが、成長できるか、できないかの分かれ道となります。40 歳という限られた在籍期間をより充実した有意義なものとするためにも、自ら成長の機会を掴みに行く姿勢を貫き通すことが重要です。私たち一人ひとりの成長が、まずは身近な大切な存在を豊かにし、その豊かさは地域に伝播する礎となります。その積み重ねの先にある「明るい豊かな社会の実現」を目指し、共に歩みをとめず、躍動感溢れる革新的な運動を展開しましょう。
 対話と交流を重んじ、組織の発展と個の更なる成長、そして何より愛する地域の発展のために全力で邁進する所存です。皆様のご理解とご協力をお願い申し上げ、理事長所信とさせていただきます。
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